SINCE 1984
神のバイブレーション
水間敏隆
 昨年開催された9年ぶりの個展「Portrait of God(神の肖像)」は、内外にヤン・パーカーの健在ぶりを強く印象づけ、同時に数多くの示唆を残した。それは白血病からの単なる帰還というだけではなく、その過程の中で得た創造主への確信を明瞭に芸術として提示したことによる。彼は制作活動が再開できるまでの困難を「神の試練、そして愛」として捉え、神との対話の中に真理を見出してきた。作品の圧倒的な存在感の多くはここに起因する。
 自然の中で瞑想するのが常だった彼は、木や花々のデザインが完璧であることに驚喜し、それをデザインした存在を確信する。そしてその創造主の作品が放つ「愛の波動」を表現しようと「スピリチュアル・インプレッショニズム(霊的印象派)」を標榜、遍在する神の姿を風景画で表現しはじめる。彼は、制作時間の多くを戸外で過ごし、四季のあらゆる天候のもとで創造主との対話を繰り返した。その度に彼の感性は鋭敏に研ぎすまされ、その深度が増すごとに世界中のファンの心を鷲掴みにしてきたのである。
 それゆえ、「スピリチュアル・アブストラクト(霊的抽象)」ともいえる完全抽象への移行は、彼にとって至極自然なものであり必然でもあった。「大自然という被造物を通しての間接表現ではなく、『神』なる存在を直接的に表現したい」、この抑えがたい衝動は、9年間の沈黙の中で更に醸成され、妻であるサワコ・パーカーとの出会いの中で具現化する勇気を与えられたのである。
 今、彼は、「God」シリーズとして三部作に挑戦している。昨年発表された「Portrait of God」、今回の「Color of God」、次回の「Hart of God」である。それにしてもシリーズの根幹をなす第二部のテーマに、彼はなぜ「Color(色)」を選んだのか。私は、今回の構想を打ち明けられた時、深遠な神を表現するのに「色」はあまりに安直で直接的な表現ではないのか、と詰問した。しかし彼は、確信に充ちてこういった。「今回のテーマに『Color』に勝るものはない。」と。
 素粒子物理学では、存在するものはすべて振動であり、光、その反射である色は振動率の差異なのだという。ちょうど仏教でいう、色即是空、空即是色であり、「色」という実態は実は「空」だが、存在である「色」はすべて「空」から成り立っているというのである。であるとすれば、創造主の思念が「色」として表現されるはずであり、芸術家はその振動の差異にいかに感応できるかに関わってくるのだ。ヤン・パーカーはこの関係を神との対話によって体感し、「色」に対する確固たる確信を導き出していたのである。私はそれを知り、先の詰問を恥じた。そして、ヤン・パーカーが導きだした「色」への結論が急に待ち遠しくなったのである。
 作品を見てほしい。一切の迷いを超えた「色」、そして「振動」ともいえる力強い筆のストローク。正しく「Color of God」がそこに存在する。それは、神の心情のバイブレーションであり、私たちの内奥に原初から存在するバイブレーションなのだ。そして、互いの「色」が共振するとき、我々は親子の情にも似た幸福感に満たされるのである。ヤン・パーカー、それは神のバイブレーションと一つになった画家なのである。
(GALLERY-BS総支配人)
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